大分建設新聞

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大分の造園プロ大集結 類を見ない難工事工事

2022年03月10日
 県土木建築部は、「リボーン197」の事業名で進めている歩道の再整備で、大分市荷揚町の城址公園大手門西側にある傾いたクロマツ1本を城址公園内の東側に移植した。移植作業は、2月12日午後9時~翌13日の午前7時まで国道197号とその周辺道路を交通規制して行われた。

同工事を請け負った㈱栗木精華園(大分市)の栗木康一代表取締役に話を聞いた。
「記録を見ると、移植する松は戦後まもなく、70年ほど前の写真に1本だけ写っており、ほかの松とは違い戦前に植えられたもの。樹齢はおよそ100年は経っていると思われる。1本だけ立ち方が違うのは、当時の府内城の庭の一部として大手門を修景するためにかたどられたのではないか。堀や池、門などに対して植える植え方で、造園では珍しくない」と話す。
 歩道の邪魔になるこのクロマツについて県の協議会では、初め「切る」という決断をしたが「切らないで欲しい」という市民の声が起きたという。栗木さんも「造園業界としても、戦争で焼け野原になった大分市の中心地に残った価値のある木なので、大切に遺したいと考えた」そうだ。
 市民の声は行政に届き、切ることは免れたが、移植をすることになった。
「このサイズの木の移植の経験はあるが、類を見ない難工事になる」と栗木さんは頭を抱えた。その理由の一つは「松の木の下は砂地なので、松の周囲を掘り、持ち上げた時に土が根についてこないのではないか」と危惧したから。木に土がついてこないと活着率(移植した植物が根づいて成長すること)が落ちることになり、枯れる心配があるからだ。

5年前から準備重ねる
 栗木さんは「40㌧近い木の移植を与えられた時間内に、土のかたまりを壊さずにどうやって運ぶか」頭を悩ませる日々が続いたことを思い出す。
 請け負った5年前から準備を重ねてきた。根鉢を作るために、2年をかけて発根を促進する「根廻し」に取り組んだ。作業が始まって10日頃から「周囲を掘っていくにつれ発根は進んでいることが確認できて胸をなでおろした」。一方で「下の方は不明だ」と心配は尽きなかった心中も明かした。
 また、「交通規制ができる時間が限られていたことも大きなリスクだったし、限られた時間の中で多くの作業者をコントロールすることも難しいことがわかっていた」と工事の難しさも話した。
 実際、両側に大型のラフタークレーンを配備し、わずかな距離を大型トレーラーで運び、30人を超える作業者が慎重に働いていた。交通誘導員も20人以上という大規模な工事だった。規制中の道路の信号機や表示板などの交通標識も一時的に外したほどだ。
 
 今回の移植作業はチームプレイが必須だ、と栗木さんは考え「県造園建設業協会」に応援を依頼したところ、10社以上が賛同し、日造協、樹木医会など樹木に関係するすべてのスペシャリストが集まることになった。「本当に皆さんに感謝している」と栗木さんは素直な気持ちを表した。
 さらに「文化財になっているお堀の石垣の石を外すことも、当初は許可が出なかったが、専門の石工が外して元に戻すという条件で許可がでた」と、別の苦労のエピソードも話す。
 「5年の間、準備を進めてきたが、皆んなの知恵が集結される時がきて、おかげさまで移植は無事に終わった」と、異例の工事だったこと振り返る。造園業では1つの工事で10社以上が集まることはまずない。「まさに造園大分ワンチームだった」と、大分県の造園業界の底力を改めて噛み締めた。
 同社の樹木医の柿本雅子さんは「松の根の細根は確認できた。これからの100年を生きてもらいたい」と、大切な松に希望を託した。
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