大分建設新聞

特集記事

けんせつ小町座談会 2021

2021年09月07日

■登壇者
  • 株式会社日建総合建設 三宅つかさ
  • 角栄建設工業株式会社 秋好杏美
  • 協同エンジニアリング株式会社 加藤綾子
  • 株式会社サザンテック 佐藤美鳩
  • 恵設計室 野村香奈恵
MC/NAOTO KITAMURA ATELIER 北村直登

 BUILD OITA(おおいた建設人材共有ネットワーク)は7月9日、由布市湯布院町にある『COMICO ART MUSEUM YUFUIN』で、女性技術者が建設業・モノづくりの魅力を伝えるBUILD OITAトークイベント「けんせつ小町座談会」(大分建設新聞社後援)を開いた。

 会場には鶴崎工業高校、大分工業高校、日田林工高校、県立工科短期大学の学生、計10人が来場。画家の北村直登さんがMCを務め、第一線で活躍する女性技術者の「けんせつ小町」5人と、ざっくばらんに語りあった。学生からの質問にも、女性目線から見たやりがいや、ものづくりの魅力、仕事と家庭との両立などについて、経験やエピソードを交えて話した。
会の後半では、北村さんアドバイスの下、「わたしが作りたいもの、きのうを超える大分」をテーマに、それぞれの「未来」をキャンバスに描いた。
 パーテーションの設置、消毒など、座談会は新型コロナウイルス感染症対策を行った上で実施された。終始明るい会となった座談会の様子を、写真と共に紹介する。

女性が建設現場で働く現状は?

―現場で触れた最新技術、「すごい」と感じたことは。


加藤 :陸上や水中のドローン技術は、昔は入っていけなかった危険な場所での調査も可能にしてくれた。また、画像を送ってもらうことにより、現場から離れていても、子どもの体調に合わせたテレワークなども可能にしてくれた。

佐藤 :AIやドローンを利用した橋梁の損傷自動認識、自動判定技術など、実用が進められている最新技術が多くある。最終確認は人間の目が必ず必要なのは変わることが無いが、危険な場所での作業など、人手不足を補ってくれる存在に変わっていくだろう。
―かつては「きつい、汚い、危険」3Kと呼ばれていた男性社会で、女性は働きづらいイメージがある。

三宅: ヘルメットや安全帯の着用など、現場ならではの姿はある。雨に濡れることもあるし、ペンキ汚れなどもある。だが、汚れた服は洗えばいいし、汗をかいたらお風呂に入ればいいという考えでいる。
高い所に上ることもあり、足場の上は怖いし危険。だが「危険」と思うことが大切で、それに慣れてしまうと労災につながる。「危険」を意識することは、職場や現場の安全を保つ上で必要なこと。

秋好: 昔の土木へのイメージは「キラキラ女子」から遠く離れたものだった。3Kも聞いたことはあった。が、実際に働いてみて感じるのは、土木のきついは精神的にきついわけではなく、肉体的な辛さ。だがそれもチームが支えてくれる。汚れに関しても、その日の汚れがその日の頑張りであり、部活のユニフォームなどと一緒。危険については三宅さんと一緒で、常に敏感でいなければならない。3Kについては、女性が参入することで、もっと良い捉え方ができるようになる。

加藤: 基本がデスクワークで現場に向かう機会は少ないが、私服を汚さないために作業服が存在するのであり、「汚してなんぼ」の精神で取り組んでいる。橋の点検時は、クレーンのボックスに乗って橋の下にもぐったり、ハーネスを着けての作業の日もある。だが、怖がる必要はなく、基本に忠実に作業をすれば、危険もない。

野村: 期限がある工事については、休み返上で進めることもある。だが納品日を守ることはどの職でも一緒の大変さだ。いろんな人が関わる現場だが、「いいものを作りたい」という目標は一緒。その目標を達成するためにチームになって動き、危険を回避できるように現場では安全対策を行う。

―仕事をする上で、設備的なものは男女分けられているのか。

秋好: 現場や工期によっては簡易トイレが設置されるが、1つしかない場合もある。会社に希望して、トイレだけ分けてもらうこともできた。いまは山奥の現場でない限り、不便を感じることは少ない。

加藤: 海の現場に行く時には、事前に必ずトイレに行っておくなど、普段から気を付けている。現場では男性側が配慮してくれることも多く、困ることもそうない。
 

女性だから気になるコト

―働き方改革の流れもあり、女性にとって出産後復職しやすい環境かどうかは気になるところ。産休やその他の休み、福利厚生などの条件とその活用状況は。

秋好:実は11月に出産を控えている。現場が好きだが、現在は事務所での仕事をこなしている。10月から産休をもらい、一年後に復帰予定。会社には2回育休を取得している方もいて、会社の福利厚生には安心感がある。

三宅 :制度は会社に導入されているが、自身が使ったことはない。だが会社の先輩女性社員の取得実績はある。子どものPTAに参加するため午後から休む、であったり、親の病院の付き添いで休む、などにも柔軟に対応してくれる環境が整っている。

加藤:出産、育児後に入社した会社だが、子どもの病気や子どもの介護休暇などもあり、子どものための休みは会社が臨機応変に対応してくれるのでありがたい。卒業式や入学式は3月の忙しい時期に重なるが、会社全体が協力してくれる。

佐藤:現在週3日で勤務している。特殊な勤務形態でも柔軟に対応してくれているので、充実したプライベートを確保できている。出産や育児休暇制度を利用したことはまだないが、女性技術者が増えてきた事により、会社も制度を整えようとしている。男性の育休もぜひ推進して欲しい。

―福利厚生を意識して会社を選んだのか。

加藤:高校~大学までは土木関係を専攻していた。一旦は違う職に就いたが、子育てが一段落した頃、今の会社を大学の恩師から紹介された。資格を取っていて良かったと実感した。

佐藤:ホームページやハローワークの求人票をみて応募した。週3日という勤務形態を受け入れてくれて感謝している。

三宅:お休みをもらうことは悪いことではない。当日取るのではなく、計画をもって取得すれば問題ない。休みの翌日、現場が動いていたら、前日の進捗をしっかり確認するようにすれば良い。

―職場でのパワハラ、セクハラなどのハラスメント経験はあるか。

三宅:職場や業者さんは七十代の方も多く、若い世代と喋りたい方も多い。ジェネレーションギャップを感じることはあっても、本当の意味で心を痛めたことはない。気にしない、気にしすぎないことも大切。

秋好:セクハラ行為を受けたことはない。受けたと感じる人は、職場の相談しやすい人に相談を。コミュニケーションは会社での円滑な人間関係にもつながるので、言われた言葉も捉え方次第だと思う。冗談からの逃げ方も大事だ。

加藤:10~80代の方が活躍する職場だが、コミュニケーションとハラスメントの境界があいまいな面はある。かけられた言葉は、引きずらないように自分で気を付けている。セクハラ、パワハラを意識しすぎて喋ってくれない上司もいる。自分からコミュニケーションを取りに行くことも大事だなと感じている。

佐藤:他業種の人に「これだから女は」と言われたことがあり、少し引っかかる物を覚えたことはあるが、深く考えず、直ぐに頭を切り替えた。喋るのは苦手だが、コミュニケーションを取らずにいると、仕事、会社は成り立たない。相手の年齢、性別に合わせて喋るように努力している。

野村:現場の方はコミュニケーションを取ってくることが多い。若い人と喋りたい年配の人もいる。深く考えず、うまくかわすことにより、会話が広がることもあると思う。
個人で仕事をしているため、パワハラなどのハラスメントの経験はないが、女性をきちんと評価してくれる皆さんの職場は素晴らしいと思う。見習っていきたい。
 

女性ならではの強みを生かす

―女性だからこそ貢献できたということ、また仕事の魅力は。


三宅:リフォームのため、お客様の家でキッチンや水回りを見ることが多いのだが、女性ならではの使い勝手や目線で提案することができる。奥様も、男性より女性の方が話が弾むことも多い。自分の仕事が形で残るので、目で見える達成感が味わえる。

秋好:道路を造る上で、男性は予算や工期を気にしがちだが、防護柵や休憩所に花を置くなど、女性目線で現場環境を良くできる。また、段差や道の凹凸に「ベビーカーだったら、年配の人だったら」と、細かい部分まで気が付くことができる。工事現場の近所の人にも話しかけられやすいので、現場と人、両方に寄り添うことができる。

加藤:自分が造りたい形を、基準を満たした中で表現できるのがやりがい。生活を豊かにする未来を造るのが自分たちであることが誇らしい。人口が減っても、土木はなくならない。手に職が持てる業界だと思う。

佐藤:インフラ、公共で使う物を設計することにより、「日常を支えているのが自分たちだ」という自負につながっている。初めて設計した橋が完成した時は嬉しかった。

野村:家の設計を行う際、水回りの動線など、家の中に長くいる女性ならではの視点、細かい所に目が届きやすいという面が役立ったことも多い。更地だったところに建物が建つ達成感は、ほかでは味わうことができない。この業界は何歳になっても勉強。自分で調べ、興味を持ち、やってみることで世界が広がっていく。
 

■学生の感想

鶴崎工業高校 後藤 奈々美さん
(建築科2年)

 初めてけんせつ小町座談会に参加した。インターネットで調べるだけでは分からなかった、女性の働く環境、休日取得の実態が知れて参考になった。現場だけでなく、どの部署でも女性が活躍できる建設業界に、さらに興味が持て、夢が広がった。現在は進学し、一級建築士の資格を取りたいと考えている。

鶴崎工業高校 内田 ひなさん(建築科3年)

 3年生ということもあり、進路について悩んでいた。設計の仕事がしたいと考えていたが、この座談会で「まずは現場を知り、全体の仕事を見てからの方が良いのでは」と考えが変わった。インターンシップでも、女性技術者の方と直接話す機会は無かったので貴重な体験ができた。一般職からの転職でも「楽しい」と思える建設業界は素晴らしいと思う。今は県外にも支店のある県内企業に就職し、現場から働いてみたいと考えている。

大分工業高校 麻生 有里佳さん(土木科2年)

 初めて実際の女性技術者と話す機会に参加した。明るい人が多く、女性の活躍の場も広がっているのを感じた。トイレの話など、大変なことや逆に有利な点など、総合的に話が聞けてよかった。将来は県内に就職し、住み慣れた町、通ったことのある道の整備に、現場で関わりたいと考えている。

大分工業高校 三浦 紅葉さん(土木科2年)

 建設業界で働く女性は「自分」を持っている人が多いと感じた。パワーが凄い。仕事の内容だけでなく、自身の人間性を見直すきっかけにもなった。将来は女性技術者として、県内の道路、橋など、地元のインフラ整備に関わりたいと考えている。
 

けんせつ小町とは
日本建設業連合会が付けた建設業で働くすべての女性の愛称。
建設現場で働く技術者、技能者、土木構造物や建築物の設計者、研究所で新技術を開発する研究者、営業担当者、会社の運営を支える事務職など、多岐にわたって活躍する女性のこと。








 
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