大分建設新聞

インタビュー

磯田 健さん(大分県企業局長)

2022年05月13日
略歴~ 1987年、北九州大学大学院を修了して県職員に。企画振興部審議監兼政策企画課長、総務部理事兼中部振興局長、生活環境部長などを経て、今年4月から現職。宇佐市出身。59歳。
 令和2年7月豪雨の時、別府市朝見の発電所に送水している由布市の元治水井路が被害を受けた。別府市民の飲料水にも利用されているため、県の企業局が直ちに出動して応急処置を行った。このとき磯田さんは、由布市を管轄する県の中部振興局長として働いており「企業局には本当に感謝した」と振り返る。そして今回、これから本格的な復旧を行う企業局側に立つことになり「仕事はつながっている、とつくづく思う」と語る。
 企業局の事業としては「発電所のリニューアルについては計画に沿って着々と進めている。大野川発電所のリニューアルは終わったが、今は本格的な稼働に向けて微調整を行っているところ。12ヵ所ある発電所の多くは耐用年数を迎えており、朝見発電所はリニューアル工事中」とリアルタイムの進行状況を説明。
 そして「発電所やダムの工事には高度な技術力が要求される。このため電気設備、水路、取水口からの長い経路など地元の専門業者にお願いすることになる。長期的なリダンダンシー(予備の手段)も考える必要がある」と、業界の技術レベルの維持、そして承継の重要性を強調した。
 さらに「県の産業の根幹を成している工業用水は絶対に止められない」と不断のテーマを掲げ、工業用水路整備の歴史が昭和の時代まで遡る中で「中長期的な計画を作って改修に入る必要がある。隧道も多く、調査の上で必要に応じて管工事、トンネルなどを発注する」と今後の見通しを示した。
 一方で、事業を支える職員については「安定供給へのモチベーションは非常に高く、先人がやってきたことは当たり前という姿勢で伝統的に地道な作業に取り組んでいる。これを当たり前と捉えず、もっと彼らに光を当てたい」と、現場の技術者にねぎらいを込め、企業局全体のPR活動の必要性を強調する。
 磯田さんは、企業局のスタッフに次の三つのお願いをしていると言う。
一つ目は「タスクで仕事をしてほしい。事務分掌で仕事をするのではなく、使命は何か、その使命を達成するためにどうすればよいか考えてほしい」。二つ目は「現場で考え続けること。現場での疑問が重要。必ず現場にヒントがある」。三つ目は「仕事は人生の一部。やりがいを感じて楽しい仕事にしなければ能率が上がらない」。
 磯田さんの仕事に対するビジョンは全くブレない。現在とつながる歴史の事実を取り上げ、「長い時間の流れの中で仕事に生かされている」という話には説得力がある。そして、率先して行動を起こすような言葉を選び、いろいろな場面で職員への文書に添えてそっと背中を押しているという。
 建設業界に対しては、普段からの努力と協力に感謝の意を表した上で「技術を維持し、さらに新しい技術を取り込んで競争していただけるよう勉強会などの機会を作り、一緒に恒常的な切磋琢磨ができる環境を整えられればと思っている。地場企業の皆さんができるような形で技術の統一性とかマニュアル性が成されるといい」と、発注する側の責務を語って話を結んだ。
 磯田さんはサイクルスポーツ(自転車)に造詣が深いが、休日は宇佐の実家で畑仕事に汗を流している。植物を育てること、本物の緑に触れることは心のリハビリテーションに効果があるという。
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