大分建設新聞

インタビュー

奈須 健さん(FIG㈱テクノロジー連携室)

2022年06月16日
 県が主催した2021年度特許チャレンジコンテストで表彰された㈱石井工作研究所(大分市)の「マンホールなど狭所内情報取得装置」の開発。これに携わる親会社のFIG㈱(大分市)テクノロジー連携室の奈須健さんに話を聞いた。  開発のきっかけは、上下水道を管理する企業から「マンホールの中の水位を超音波で測定できないか」という依頼が発端。その背景には、令和2年7月豪雨の時の福岡県大牟田市の大水害があるという。水害の原因を調査するなかで、ポンプ場の排水容量が足りなかったのではないか、あるいは地域の下水の流れがエリアによって負荷が高かったのではないかという推論から、マンホールの中の水位の測定の必要性が生まれた。  従来の投げ込み式の水圧試験センサーは、有線なのでマンホールの蓋を開けたままの状態でないと測定できない。これでは肝心な場所の測定ができず、実際の水量の把握は非常に困難となる。そこで「蓋を閉めたまま測定できる超音波式の非接触型に取り組んだが、実際にマンホールの蓋を開けてみると転落防止柵が付いているし、降りて行くタラップもある。音波は広がり乱反射するので測定が難しいことが解かった」と語る。  しかし、そこは百戦錬磨の技術者魂に火が付き「実際の状態に近い環境をつくり、吸音材と管のベストな関係を得るために200パターン以上の実験を重ねた」と言う。それだけ多くの汗を流した。  「実験の結果、精度が飛躍的に向上し、実際のマンホールで測定したところ、満足のいく測定ができた」と今回のコンテストにつながるモデルができた。光が射してきた。  「汎用性の高いものができた。指向性が高く、余分な乱反射を吸収せずに測定できる」と超音波の特性を活かした完全非接触を実現できて自信を得た。「課題はあるが、狭いところで超音波式の測定ができたことは大きい。小型化により製品の形を変えずにツールを付加することで測定の幅を広げたい。構想はできているので、ロットの確保ができれば製品化は加速する」と心強い。  「次のステップはLTE通信で外部にデータを送ることだ」と先を見据える奈須さんは「将来的にクラウド管理できれば、データが共有化できてトータルの流入量がリアルタイムで見られる。ポンプ場には複数のポンプがあり、運転の調整には上流側の水位を知る必要があるが、それが出来るようになる」と期待は膨らむ。さらに「河川管理のサービスへ展開できれば防災にマッチングできるのでは」と、災害が発端だった製品開発が防災テクノロジーにつながることを期待する。「排水量と水路の関係が測定できれば、工事の優先順位までわかるのでは」と夢が広がる。製品の試作モデルを持って紹介に飛び廻りたいという奈須さんのモチベーションは高い。
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