大分建設新聞

インタビュー

中田 一夫さん(庄司建設工業)

2012年12月08日
 トンネル掘削が主体の庄司建設工業(有)(佐伯市鶴望・三又庄司社長)の現場職長を務める中田一夫さん(57)は、トンネル工として、24年度の優秀施工者国土交通大臣顕彰(建設マスター)に選ばれた。「錢高組さんの下請けで、宇佐市の東九州道赤尾第三トンネル(960㍍)を、周りの皆さんの協力で無事故無災害で完成させた。錢高組が建設マスターに推薦していただいたおかげ」と話す。  この道35年。山あり谷ありだった。「今でこそ油圧ジャンボを使った掘削で、騒音や振動が少なくなったが、22歳で入社した当時は、風圧削岩機が主流だった頃で、音が大きく苦労した。先日受けた健康診断で、『高い音が聞こえづらいでしょう。少し難聴気味』と言われた。難聴はトンネル工夫の勲章なのかも。また当時、高千穂の現場で、自分の持ち場だった所に掘削機械の部品が転がり落ち同僚が大けがをした。私はちょうど何かの用事で持ち場を代わったところで、一歩間違えば自分がけがをするところだった」と振り返る。  「トンネルは10件の現場を経験した。中でも、昭和61年に掘った国道326号の松谷トンネル(豊後大野市三重町)工事の時は、非常にもろい土質で、山が崩れたことが2度もあった。今のNATM工法では、コンクリートを吹き付けることで山崩れを未然に防いでくれるので大事故になるケースは少ないが、当時は在来工法で掘っていたので、対策に時間がかかり大変苦労した。トンネルを通るたびに当時を思い出す」と懐かしむ。  「うれしいのは、やっぱり貫通式。最後の貫通発破ボタンを押し、崩れ落ちたズリの隙間にできた小さな穴から一筋の光が差した瞬間は、何ものにも代え難い感動がある」。トンネル工だけに許される至福の瞬間だ。  「これからも無事故無災害で掘り続けたい。今の若い者の中には、バールの使い方を知らず、センターボルトを通す時に穴に指を入れるなど、考えられないような行動をする者もいる。そんな彼らに徹底した安全教育を教え込むのが、我々の責務。我が社の工夫も平均年齢が40歳代以上と高齢化のきざしがみえ、20歳代がいないのが気にかかる。トンネル掘削自体も先細りしそうで、会社が食っていくためにはトンネル補修や橋脚、床版耐震補強工事などの仕事を積極的に請けていかねば」と会社の将来に思いを巡らせる。 


これまで10件のトンネル工事に携わり経験豊富な中田さん

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