大分建設新聞

インタビュー

一宮 一夫さん(大分工業高等専門学校)

2020年02月14日
 電子情報通信学会は1月30~31日、別府国際コンベンションセンターでエレクトロニクスシミュレーション研究会を開いた。
 講師に招かれた大分工業高等専門学校の一宮一夫都市・環境工学科教授が、「コンクリート橋のメンテナンス現状と九州での取り組み~土木分野への電子情報通信技術の活用~」をテーマに講演した。
 一宮教授は「インフラの老朽化による危機は深刻で、2012年の中央自動車道・笹子トンネルで発生した天井板落下事故の後、国はインフラ長寿命化基本計画を策定し、メンテナンスサイクルを構築した。14年からトンネルや橋の管理者に義務化された5年に1度の定期点検に対して、地方公共団体は予算と人材の確保に苦慮している。技術者の不足や、すべて目視という困難な点検方法を電子情報通信技術で担わなければ、全国約72万橋梁の点検は難しい」と、現状の深刻さを指摘。
その上で「低コストの装置を開発しなければ社会貢献には結びつかない。防災・減災も緊急テーマとして加えて研究者の皆さんに期待する」と話した。
 質疑応答では、センシング(検査・計測)機器、塩害や温泉地のコンクリート被害、5年に1度の目視点検などについて活発な質疑が交わされた。
 一宮教授は、コンクリート構造物で重要なのは何といっても鉄筋。
その健全度を正確に確認する必要があるとし、「地下構造物など特に超音波が使えない現場をはじめ、さまざまな状況で電子情報通信技術の活用が必須」と答え、また、低炭素で高耐久性の次世代コンクリート『ジオポリマー』の紹介もし、さらに、セメントの国内生産が開始されてから150年を迎える、25年の大阪万博にジオポリマー製のシンボルが建設されることを期待している」と結んだ。
 講演後、電子情報通信技術の研究者たちは一宮教授を囲み「非常に興味深い内容だった」と口を揃え、感銘を受けていた。
異なる分野の研究者が交流を図ることで、国内のインフラメンテ5兆円市場の整備が加速することを期待したい。


コンクリート構造物の健全度を確認する必要があると話す一宮教授
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