大分建設新聞

インタビュー

佐藤 佳郁さん(㈱佐藤塗工代表取締役社長)

2021年10月15日
 1951(昭和26)年に創業し、70周年を迎えた㈱佐藤塗工の佐藤佳郁社長に話を聞いた。
 「20年前に社長業を継いだ時には、会社は腕の良い職人の集団だった」と振り返る。社長のビジョンとして、その頃は下請けから元請けへの進化を掲げていた。当時、塗装の単価は下がっていたので、どんな環境にあっても利益を確保できる原価の低減に取組んだ、と言う。そのためには「社員全員が経営者の感覚を持って仕事に取り組むべきで、職人が中心にならなければならない」と、社員に説いた。一朝一夕にはいかなかったが「目的は何か」を明確に掲げて愚直に説明を続けた。佐藤さんの熱意は社内全体に行きわたり、描いた全体像の輪郭は整った。
 次に取り組んだのは、組織体制の整備と社員教育。社員30人の佐藤塗工は事業ごとに部門化されており、大企業によく見られる部門管理制度の確立が見て取れる。また「塗装業は人の生活の中に入っていく仕事なのでマナー教育を中心に力を注いだ」と強調した。こうした教育は現在も継続しており、以前は勤務時間外で行っていたが、今では勤務中に実施している。
 月1回の会議では、はけ、材料、副資材の特性を職人と議論してコストダウンに結びつけるところまで来た。そして、驚くことに協力会社約30社の200人余にも同じ教育を施し「教育を受けた者でなければ現場には出さない」やり方は、佐藤塗工のブランド力を裏付けるものでもある。
 「社員と経営計画を立て、PDCA(計画・実行・評価・改善)を回している」と話すが、聞いていると、Pつまり計画の前の課題形成がとてもしっかりしているという印象を受ける。「専務時代から会社の抱える課題をずっとノートに書き綴っていた」と入念に準備してきたことを明かした。さらに「すでに(自らの)社長引退までのスケジュールもできており、社内でも公開している」と言うから驚く。
 「同じ会社で働くということは同じ船に乗っているということ。お互いをリスペクトしなければならない」思いで社員と面談を続け、社員の声に耳を傾けてきた。特に新入社員の場合は「(彼もしくは彼女の)家族と一緒に声を聞いてきた」と、これまでの道のりを感慨深く噛み締めながら言葉にした。
 塗装については多くを語らなかったが、仕事に対する意識や進め方は、下地の処理が命で、丁寧に何層にも重ねて塗る、ムラやはみ出しは許されないという、まさに塗装の技術と重なるものを感じた。
 会社は全てが緻密なスケジュールの通りに動いているが、今の佐藤社長には日本塗装工業会大分県支部の支部長の役目を後継者に確実に引き継がせる、という大きな仕事が残っている。
 若い頃はラグビーで心身を鍛えた文武両道の強者だが、時に旬のものを使った料理にも腕をふるうそうだ。さらに、会社を引退する時に遺す書のために、最近は書道も始めたという多才ぶりも披露してくれた。

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