大分建設新聞

四方山

2024年03月25日
 中津の実家に1人で暮らす母は、およそ「諦める」ということを知らない。欲しい物は必ず手に入れるタイプで、物であれば「迷ったら両方買う」という性格。ともすれば自己中心的とも取られかねない性格なのだが、本人の愛嬌と年を取ってもアクティブな一面から、どこか憎めない人だ。若い頃は電車とヒッチハイクで東京、大阪、北海道まで旅行していたと言う。今の時代では考えられない話だ▼そんな母が5年前「車を乗り換えたい」と言い出した。しかも「人生で一度くらい新車に乗りたい」と。年齢(70)を考え、中古か、新車をリースでも良いのではと説得を試みたが、がんとして譲らない。そのうち気に入った車のカタログを集めるようになり、数カ月たつと選抜に勝ち残った3車種のカタログに、見積書がクリップで留められている状況となった▼「これはいよいよマズイぞ」と、兄弟間で緊急会議が開かれた。だが母の性格を分かっている子どもたちは早々に説得を諦め、後半はお金をどうするかの話し合いと化した。母はなぜかお金を出してもらう気満々で「安いのを選ぶから」と言う。問題はそこではないのだが、ウキウキしている母を見ると、全員が「懐からの諭吉大量流出」を覚悟せざるを得なかった▼田舎に住んでいると、移動手段としてどうしても車が必要となる。母はまだ元気に車を運転して買い物に出掛けるが、テレビで高齢者の交通事故を目にする度、嫌でも想像してしまう。いつ免許を返納させるべきか、させたとして、その後の生活をどうサポートすればよいのか。大きすぎる問題に、わが家はまだ解決策を見いだせていない▼そんな母が先日、どんなに安くても数十万はするであろう「マッサージチェアが欲しい」と言い出した。兄弟は全員、恐怖に震えている。(万)
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