大分建設新聞

四方山

人の世の常

2024年03月28日
 「さくら花/とく散りぬとも/おもほへず/人の心ぞ/風も吹きあへず」。そろそろ花見のシーズンである。咲いたと思ったら花びらを散らしていく。はかなさが桜の醍醐味であろう。その桜よりも、人の心は風が吹かずとも移ろいやすいと、冒頭の歌を詠んだのは、三十六歌仙の一人、紀貫之である▼心変わりは人の世の常、とも言う。とかく変わりやすい。石川県能登町の「イカキング」をご存じだろうか。全長13㍍の巨大なモニュメントで、同町の特産品がスルメイカであることから2021年につくられた。「無駄遣い」と、評判は散々だった。建設費2700万円のほとんどが国から交付された新型コロナウイルス対策費からまかなわれたためだ▼元日の能登半島地震で、津波が直撃した能登町は壊滅的な打撃を受けた。その中で津波に流されることなく、ほぼ無傷で残ったのがイカキングだった。激震にこらえて踏ん張った「無駄遣いの象徴」は、いまでは復興に向けた希望のシンボルになっているという▼一方で人知れず処分されていたのが、プロ野球・阪神タイガースファンには思い出深い「カーネル・サンダース像」。1985年のリーグ優勝に歓喜したファンが大阪・道頓堀に集まり、ケンタッキーフライドチキンの店頭にあった同人形を持ち出し川に投げ込んだ。24年後に奇跡的に発見され話題を呼んだが、それきりで忘れられるのも早かった▼大分空港と大分市を海上ルートで結ぶホーバークラフト運航計画で、操縦訓練中の「Banri」が空港の専用路でフェンスに接触した。昨年11月にも「Baien」が同じ場所で衝突事故を起こしていた。ともに速度超過が原因らしい。最初の事故で引き出された教訓は生かされなかった。人命にかかわる問題である。忘れていいわけがない。(熊)
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