大分建設新聞

四方山

台湾

2024年03月29日
 20数年前、台北で台湾人の住宅の一部を間借りしていた。世帯主のお年寄りは日本統治時代に鉄道の機関士を務めていた日本語世代。「日記は今でも日本語で書き続けている」が口ぐせで、会話は日本語か台湾語で北京語(中国語)を使わなかった。戦時中、台湾でも米軍の空襲があり、そのたびに列車ごとトンネルに避難したことを話していて「日本人」だったことを誇りにしていた▼今では日本語世代はほとんど姿を消しており、当然ながら台湾人アイデンティティーが高まっている。2月に台湾で発表された意識調査結果によると、「中国人」であることを認識する人が2・4%で、調査開始の1992年以降で最低という結果。その代わり「台湾人」とした人は61・7%を占め、60%を超えたのは4年連続となった。この調査では「台湾人」と「中国人」の両方という回答も用意されており、前年比1・4ポイント増の32%だった。どちらかに決めきれない複雑な意識を持つ人も少なくない▼現在の台湾住民は戦後、中国から国民党とともに逃れてきた外省人(13%)と、それ以前から居住する中国・福建系(70%)、広東系の客家(15%)、南洋系のオーストロネシア語族の原住民(2%)の四つの族群がある。外省人は「中国人」、福建系・客家系の本省人は「台湾人」という意識を持っていたが、現在の若者は所属する族群の傾向にとらわれていない▼総統に選出された民進党の頼清徳副総統は本省人で台湾独立傾向が強いが、5月の総統就任後はこれを表面化させることはないとみられる。頼氏は幼いころ炭鉱労働者の父親を事故で亡くし、苦学して台湾大学を出て医師になった苦労人。知日派で安倍晋三元首相の葬儀にも友人として参列した。従来の日台関係を基に強固な結びつきに期待したい。(ゴウ)
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