大分建設新聞

四方山

尖閣最前線

2024年04月15日
 尖閣諸島を管轄する第十一管区海上保安本部(那覇)の幹部に話を聞く機会があった▼その際、意外な言葉が幹部から飛び出した。「慣れが怖い」。尖閣対応のため出動する巡視船の乗組員が、中国艦艇の存在に対する危機感がなくなることを指している。誰しも同じ人と何回も顔を合わせたり、慣れた業務だったりすると、緊張感が薄れてしまうことはよくある。無論、現場の海上保安官にはそんな意識はないだろうが、この幹部の発言には驚いた。自らに対する戒めだと理解した▼昨年、石垣市が尖閣諸島の現地調査をするため派遣した調査船に乗船した人の話によると、中国艦艇は出現すると、警笛を鳴らしながら船体に設置されている電光掲示板に「ここは中国の領海である。退去せよ」などという日本語を流したという。一方、海保の巡視船は同じく電光掲示板に中国語で「日本の領海である。退去せよ」と応じる。さらに中国艦船が調査船に近付くと、その間に海保の巡視船が入るといった攻防が繰り広げられていたという▼日本の漁船が尖閣諸島付近で操業している場合も同様だ。必ず中国艦船が出現してその漁船を追い回す。そこに海保の巡視船が現れて漁船を守るように動く。中国艦艇が日本の領海を離脱するまで闘いは続く。海保の巡視船は尖閣対応のため出動すると、1週間から10日ほどは帰港できない。長時間緊張を強いられる環境である。乗り込んだ海上保安官は肉体的、精神的にギリギリのところまで追い詰められる激務だ。業務であり仕事であるから当然であるという見方もあるが、海上保安官は使命感に支えられ国益を守っている▼残念ながら海保の現場の動きが公になることはほとんどない。政治的な配慮があるのだろうか。それでも尖閣は海保によって日々守られている。(ゴウ)
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