大分建設新聞

四方山

裏切り

2024年04月16日
 「とても幸せなことだと思います」。米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手は12日、松井秀喜氏に並ぶ日本人最多の通算175本塁打を放ち、試合後のインタビューで満面の笑みだった。わずか数時間前、同じロサンゼルスの連邦地裁では、訴追された元通訳の水原一平容疑者が初出廷したというのに、動じたところは感じさせなかった▼賭博にのめり込んだ水原容疑者が抱えた負債は何と約62億円。穴埋めとして大谷選手の口座から24億5000万円以上を胴元に不正送金していたとされる。水原容疑者は2017年から大谷選手の通訳として寄り添い支えてきた。その献身ぶりは、ある教科書会社の編集者の目に止まり、来年度の中学校英語の教科書に「成功を支える人」として取り上げられる予定だったほど▼大谷の方も信頼を寄せ、水原容疑者の結婚に当たっては、新婚旅行をプレゼントしたという。親密な関係は周囲から「兄弟」と評された。それだけに、裏切られた大谷選手の心中を思う。記録を打ち立てて喜ぶ表情の下は、深い悲しみの色に染まっているのではないか▼こちらも小池百合子・東京都知事にとっては、手痛い裏切りであろう。元都民ファーストの会事務総長だった弁護士が月刊誌で、小池氏の「カイロ大卒」という経歴に疑義を突きつけた。元環境省のキャリア官僚で、環境相時代の小池氏が掲げた「クールビズ」の仕掛け人である▼小池氏は〈日本新党→新進党→自由党→保守党→保守クラブ→自民党→都民ファーストの会→希望の党→都民ファーストの会〉と所属政党を変え、ついたあだ名は「政界渡り鳥」。仕える親分も次々と乗り換えた。裏切ることには慣れっこのはずだが、側近中の側近の反旗には不快感をあらわにした。やはり「裏切られる」のは相当こたえると見える。(熊)
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