大分建設新聞

四方山

びわ豊作

2024年06月12日
 本格的な梅雨と台風の季節を迎え、わが家はにわかに自然の恵みに預かっている。庭に自生したフキや親戚からのタケノコなどが食卓に上り、弁当にまで入ってくる。親戚からは頻繁にシイタケやタマネギ、さらにはアジなどもいただく。食で季節の移ろいを感じられるのは幸せなことだ▼ただ、最初のうちは晩酌のつまみなどとしておいしくいただくのだが、連日となると「またか」という気持ちにもなる。「今日のおかずもタマネギ炒めか」などと言おうものなら、「そんなら食わんでいい」と家族から猛反発される。季節の野菜や魚介が身体によいことは分かっている▼わりと海に近いところで暮らし、祖父の代まで農業もやっていたので、幼い頃はその恩恵を存分に受けていた。家族や親戚がサバやアジ、イカを釣ってくると毎日が魚介料理だ。ある日、部活動の練習に行き、昼食で弁当箱を開けてがくぜんとした。おかずはタチウオの切り身だけだった。骨が口に刺さって悶絶した▼子どもにはありがたさが分からなかった。大学生になって実家を離れ一人暮らしを始めてようやく思い知った。野菜や魚は買って食べるものなのだということを。大学生時代には北海道に1カ月以上住み込んでコンブ漁のアルバイトもやったが、近くにはお店が無かったのでおやつにはコンブの切れ端を食べまくった▼自然は恩恵だけでなく、思わぬことを引き起こす。豪雨災害などはその例だが、身近なところでも厄介なことが起きた。今年は例年になく実家のビワが豊作で、それはそれでありがたいものの、食べきれる量ではない。そのまま放置しておいたら、カラスが来るようになった。夕暮れに帰宅したところ、家族総出でビワの実を落としていた。カラスがビワを食べるなど聴いたことがない。どうにも不可解だ。(康)
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