大分建設新聞

四方山

多様性

2024年08月06日
 数日前の新聞に「女性『海猿』誕生」の見出しが躍った。猛暑のせいか、一瞬新種のサルが発見されたのかと思ってしまった。むろん、海猿とは海上保安庁の潜水士の異名である。海中での人命救助などを専門とし、過酷な任務ゆえにそう呼ばれている。これまで男性に限られていたが、第7管区海上保安本部(北九州)に、全国初となる女性潜水士が誕生した▼希望すればなれるわけではない。厳しい体力テストをパスした者に限られる。同庁の潜水士は121人。全海上保安官中、1%未満という狭き門だ。条件に男女の別はないが、体力的に女性には不可能と言われてきた職域だったという。また一つ男女の壁が取り払われたということであろう▼日本勢が大活躍のパリ五輪。200を超える国・地域から選手約1万人が参加している今大会は、五輪史上初めて出場枠が男女同数となった。近代五輪が男子だけのアテネ大会(1896年)で始まったことを思えば歴史的な大会である。だが想定外の事態も起きている。一部競技では出場選手の「性別」を巡り議論が巻き起こっている▼性転換をしたトランスジェンダーではないかという声も上がったが、国際五輪委員会は明確に否定。強すぎたがための心ない偏見ということで一件落着した。多様な性が認められる時代ならでは騒動だった。だが、笑い話にならない事態も起きている▼「多様性」をテーマにした開会式の演出である。女装愛好者によるパフォーマンスがキリスト教信者を茶化しているような内容だったことから、バチカンが不快感を表明する事態に発展した。フランスではイスラム教の風刺画を巡って、12人が殺害されるテロ事件が起きたことは記憶に新しい▼多様性の名の下に何もかも許されるわけではあるまい。反動が怖い。(熊)
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