安い日本
2024年09月25日
投打の「二刀流」に、「走」が加わり、さながら「三刀流」である。米大リーグの大谷翔平選手がメジャー史上初の「50本塁打、50盗塁」の未到の域に到達、さらに記録を伸ばし続けている。喜びを爆発させるわけでもなく、「一生忘れられない日になる」と言葉短く語る姿が印象的だった▼その直前には、俳優の真田広之さんがプロデューサー、主演を務めた「SHOGUN 将軍」が米テレビ界のアカデミー賞と言われるエミー賞のシリーズドラマ部門の作品賞、主演男優賞など主要部門を独占した。これもまた快挙である。真田さんは「東洋と西洋が出会った夢のプロジェクト」と喜びを述べた▼基準地価が公表された。県内の商業地は、平均変動率0・1%上昇した。わずかとはいえ、プラスに転じたのはバブル期以来、実に33年ぶり。ただ、喜んでばかりではいられない。上昇基調にあるのは、別府市、由布市などの観光地に限られており、外国人観光客頼みの開発計画に伴う影響と見られているからだ▼今年の訪日外国人観光客は、過去最高の3500万人に達する見通しという。消費額は8兆円に達するとも算出されている。彼らの目的は観光地訪問だけではない。「安い日本」での爆買いだ。例えば、1995年に1㌦=75円だったのが、今年は160円台につける場面があったほど円安基調が続く。30年前に比べて円の価値は半分以下▼新型のiPhoneの販売価格は中国に比べて、日本が数万円安いという。転売の利ざや目的で来日する外国人の存在が指摘されているが、彼らも観光客としてカウントされる。一部にせよ、この国が観光客に搾取されているようにも感じられる。有望な才能が海外を目指すのは素晴らしい。決して「安い日本」に見切りを付けたわけでないと、今は信じたい。(熊)