一票の尊さ
2024年10月22日
秋が深まり行く季節というのに、18日の県内は日田市などで31度を超え、観測史上、県内で最も遅い真夏日を記録した。いささか牽強付会だが、各地で繰り広げられている舌戦を反映しているようでもある。いよいよ投票日の27日を間近に控えた衆議院選挙。各候補者たちの声も一段と熱がこもってきた▼18日付大分合同新聞で社会面記事の図解に目を奪われた。3選挙区に立候補した各候補者の第一声を人工知能(AI)を使って分析した言葉のマッピング。各候補がどういう言葉を多用し、何を強調しているのかが、文字の大きさ、色分けで分かるようになっていた。政治的立場を超えて、人物像も浮かび上がっているようで見入ってしまった▼名詞では、党名を連呼して前面に押し出す候補がいるかと思えば、おしなべて「物価高」「裏金」「政治不信」「少子高齢化」などといった争点となっているワードが並ぶ。興味深いのが動詞だ。「つくりあげる」「拓く」は分かる。けれども「おとしめる」という不可解な言葉には、いったい何だろうかとドキリとなる▼隣の朝鮮半島も熱い。北朝鮮は憲法を改正し、韓国を「敵対国家」と規定したという。それを受けて、韓国との間を結ぶ道路と鉄道を爆破する暴挙に出た。交流どころか、対話拒否の強い意思表示であろう。両国間の緊張の度合いはかつてないほど高まっている▼両国の非難応酬合戦をAI分析すればどうなるのだろうか。「敵国」「挑発」「話し合い拒絶」「火の海」…。相当物騒な言葉のオンパレードになるだろう。改めて思う。自由に議論を交わせる社会の尊さである。きのうよりも明日の未来を自由に語れるのは、悲しいことに「世界の常識」ではない。であればこそ、その社会を守り育てる大事な一票であろう。大切に使いたいものだ。(熊)