大分建設新聞

四方山

令和の米騒動

2024年10月24日
 日本の映画史に残る名作になる予感がする。自主映画作品として製作された『侍タイムスリッパー』である。たった1館でしか上映されていなかったのに、評判が評判を呼び、全国での拡大上映が始まるや、いきなり週末の観客動員数で7位に入ったという。早速鑑賞したが、期待を裏切らない作品だった▼幕末時代から現代にタイムスリップした侍、新左衛門が主人公。行き倒れていたところを、住職に救われ、ご馳走になった握り飯を前に感激する。「このようなうまい握り飯は、食したことがござらん」。しみじみと語る表情が印象的。役者の名演もあいまって、ああ日本人は米を主食としてきた民族だと改めて思い知らされる▼その米が大変なことになっている。夏の品不足で「令和の米騒動」と言われたのは記憶に生々しいが、いよいよその影響が価格になって現れてきた。農林水産省によると、60㌔当たりの新米(玄米)の全銘柄平均価格は、前年同期に比べて48%アップの2万2700円に急上昇。「平成の米騒動」と呼ばれた1993年以来、31年ぶりの高値だという▼猛暑の影響だけでない。訪日外国人向けの需要の高まりが価格上昇につながっていると指摘される。長期化を見越して、ファミレス業界の中には、価格が比較的安定している小麦粉を原料にした「うどん」店に業態を変える動きも出てきた。このままでは米が贅沢品になる日も近い?▼再び映画の場面。ケーキをうまそうに食べる新左衛門が言う。「日の本はよい国になったのですね。こんなうまい菓子が、誰もが口にすることができる豊かな国に」。確かに貧困問題はあっても、今のところ飢餓とは無縁だ。新左衛門の前向きな精神を見習いたい…と言いたいところだが、令和に生きる者としては、何とかしてくれと叫びたい。(熊)
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