整備新幹線
2025年04月04日
「吉四六漬」が消えて5年が経つ。土地の風土、気候に根ざして発展してきた日本の漬物文化。その数は全国で600種に及ぶという中、とんち話の主人公の名を冠した吉四六漬は大分を代表する漬物だった。大根、キュウリなどを秘伝の「もろみ」でじっくりつけ込み、コクのある深い味わいに特徴があった▼歴史は新しい。玖珠町農協が1978年に開発、販売し、折からの「一村一品運動」で全国的に知られるようになったが、2020年9月に販売終了になった。背景には消費者の減塩志向があった。その影響で浅漬けが主流となり、深漬けの吉四六漬の売り上げは減少。それでも塩っ気を十分に吸い込んだ味を懐かしむ声は今も根強い▼本県悲願の東九州新幹線構想が国の基本計画路線として策定されたのは、吉四六漬の販売開始より5年前のことだった。福岡市を起点に、大分、宮崎両市を経由して鹿児島市を結ぶルートである。しかし、事業化の前提である「整備計画」への格上げは見通せぬまま、半世紀以上も塩漬けの状態が続いている▼九州で新幹線が通っていないのは本県と宮崎の2県。熊本県が「新工場建設ラッシュで経済効果は10年間で10兆円」(日本経済新聞24年2月7日付紙面)などと報じられるにつけ、つい「新幹線があれば」と嘆息したくもなる。このままでは九州圏内の東西格差も現実味を帯びてきそうだ▼県も日豊本線ルート、久大本線ルートの2案を掲げて、国に働き掛けている。だが、経済縮小、人口減少時代の中、国の反応は冷ややかだ。時に「整備」ならぬ「政治」新幹線ともやゆされる新幹線。ぜひは別にして政治力がものを言う。県選出の国会議員が今こそ一つにまとまり、固まった岩塩から計画を救い出し、整備計画に向けて取り組んでいただきたいものだ。(熊)