大分建設新聞

四方山

硫黄島の思い

2025年04月08日
 東京から南に約1250㌔の太平洋上に浮かぶ硫黄島。広く知られているように、1945年2月から3月にかけて日米両軍が激突しおびただしい死者を出した。日本軍将兵2万2000人、米軍将兵7000人が戦場に倒れた。米軍将兵の遺骨は戦時中から回収が図られたが、日本軍戦没者の遺骨はいまだ半数以上が放置されたままになっている▼3月末、現地で日米合同の慰霊祭が開かれ、石破茂首相が参列し、米側もヘグセス国防長官が出席。戦後80年の節目の年、強固な日米関係を内外にアピールする狙いもあったのだろう。石破氏が平和への誓いを述べると、ヘグセス氏は「日米同盟は昨日の敵が今日の友となったことを示している」と応じた▼「今日の友」だと言ったが、そのわずか数日後には、米国にとって日本は「友だち未満」の存在に過ぎないことがあらわになった。トランプ政権が発動した「相互関税」である。国・地域ごとに異なるのがミソだ。例えば、オーストラリア、英国は10%。EUは20%の中、日本は24%である。容赦のない高税率である▼ちなみに韓国は25%。韓国に比べたら日本は1%だけ、米国に近しいと言えるかもしれないが、何とも微妙な立ち位置である。EUなどは報復関税などの対抗策に乗り出す構えだが、石破氏は「どうトランプ氏の思いに応えるか」(5日の民放番組)と、ここまで足蹴にされても意に介さないよう▼硫黄島戦で日本軍の指揮官、栗林忠道中将は最後の突撃に当たり大本営に辞世の句を打電した。「国の為重きつとめを果し得で/矢弾尽き果て散るぞ悲しき」。だが「悲しき」は女々しいという理由で、「口惜し」に変えられて発表された。米国に言われるがままの今日の日本。泉下の中将はそれこそ「口惜し」で納得するのではあるまいか。(熊)
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