中小企業の実態
2025年04月18日
労働組合の最大組織、連合の芳野友子会長。共産党嫌いでは自民党以上と言われるだけあって、労働界トップとしては異例のことだが、自民党大会に招かれるなど政権与党との蜜月を築いている。今年の春闘では、傘下労組が各企業からの満額回答を引き寄せ、10月の任期満了を前に早くも3期目入りの呼び声も高い▼傘下労組の企業の多くは、いわゆる大企業である。全企業の1%を占めるに過ぎない。圧倒的多数はいわゆる中小企業であり、賃上げもままならないのが実状だ。例えば日本商工会議所が3月に発表した、最低賃金に関する中小企業調査がある。2020年代に全国平均時給を1500円に引き上げる政府目標の達成には年平均7・3%の引き上げが必要だが、25年度から同率の引き上げ幅の場合、15・9%の中小企業が廃業や休業を検討すると回答した▼地方の従業員20人未満の小規模事業者に限ると20・1%に跳ね上がる。廃業、休業という言葉の重さを思うと、心が痛む。物価高の中、なぜ大企業ばかりが景気がいいのか。理由は判然としている。同じく日商の昨年8月の調査では、半数の中小企業が大企業など発注者との交渉で「コスト上昇分の価格転嫁を受けられなかった」と回答した▼要は、中小企業の犠牲の上に、大企業があぐらをかいている図式が浮かび上がる。何も「民民」だけではない。弊紙3月26日紙面で報じた全国中小建設業協会の実態調査。市町村発注工事の予定価格が「適正でない」との回答は62・9%に上った▼自治体までもが中小業者に犠牲を強いているのが実態のようだ。大きな声では言えないが、政権党の支持層は決して連合傘下の労組ではない。支持基盤の岩盤層になってきたのは中小企業である。岩盤にも耐えられる限度がある。それを忘れてはなるまい。(熊)