大分建設新聞

四方山

コメ不足

2025年04月25日
 日本が焦土と化した1945年8月の敗戦。国土の疲弊と物資の窮乏から、連日のように餓死者が出た。その年の暮れには、渋沢敬三蔵相が「来年は1000万人の国民が餓死するかもしれない」という談話を発表するほどだった。実際にはそこまでひどくならずに済んだものの、食糧難は深刻な問題だった▼一方で、物資がなかったわけではない。本土決戦に備えて軍や政府機関には、ばく大な量の食料、工業用資材が隠されていた。「隠匿物資」と呼ばれ、当時の国家予算の数倍に当たる2400億円分と推定される。それらが敗戦の混乱に乗じてほぼ消えた。軍人、官僚、政治家らが闇市などへ横流ししたとされる▼陰謀論の類いではない。政府は終戦の2年後、「隠退蔵物資等に関する特別委員会」を設置し、摘発に乗り出す事態になった。国家規模で行われた、日本史上最大級の横領事件とも指摘されるように、追及する側も、される側も同じ穴のムジナ。成果を挙げられなかった。戦後80年、まさかそんな事態が起きるとは思っていないが、ふとそんな秘史が頭をよぎった▼歴史的なコメ価格の高騰が続く中、政府が3月中旬から始めた備蓄米の放出。初回放出分は14万2000㌧に上ったはずである。ところが3月末の時点で、小売店に届いた備蓄米はわずか426㌧。市場に出回ったのは初回放出量のうち、わずか0・3%分に過ぎなかった計算である。焼け石に水である▼農林水産省によると、3月の業者間取引価格は2月より609円値下がりし、60㌔当たり2万5876円だったとはいえ、消費者物価指数でみれば3月のコメ価格は前年同月比92%の値上がり率である。異常な高値が続く。輸送手配の遅れが影響しているというが、残る96・7%分の放出米はきちんと市場に届くのだろうか。(熊)
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