大分建設新聞

四方山

コンクラーベ

2025年04月30日
 王国同士の争いの絶えなかった中世ヨーロッパ。「愚者の帽子」というかぶり物があった。ところどころとんがり、その先端にいくつもの鈴がぶら下がっていた。敗者にかぶせることで、無能、愚かさを可視化するための装置だった。名誉を重んじる中世社会において、その帽子をかぶらされることは、「社会的な死」を意味した▼米ホワイトハウスから、関税措置を巡ってトランプ大統領との初交渉に臨む席に座った赤沢亮正経済再生担当相の写真が公表された。得意げに両手の親指を立てて「イエーイ」のポーズはまだいい。問題は頭にかぶった赤色のキャップだ。そこには「Make America Great Again」の文字が書かれていた。「米国を再び偉大な国に」というトランプ氏のスローガンである▼いわゆるトランプ流の交渉術であろう。だが、満面の笑みでかぶった姿を写真に撮られ、世界中にばらまかれたとあっては、赤沢氏のみならず日本は早くも米国の言いなりになっている、というメッセージになったのではないかと、危惧する。同行した官僚たちは止めなかったのだろうか▼中世ヨーロッパは、かぶり物が社会的階層を表していた。庶民は簡単な頭巾、王様ら支配層は王冠。そして最上位は聖職者の角帽である。中でもローマ教皇の白い球帽(ズケット)は、絶対的権威の象徴とされた。「愚者の帽子」の対極である▼中世ほどではないが、世界に多大な影響力を持つローマ教皇のフランシスコが亡くなった。世界の目は新教皇を選ぶコンクラーベと呼ばれる選挙の行方に注がれる。総数の3分の2を超える票を得る者が出るまで投票が繰り返され、数日がかりという。再度の交渉に向けて訪米する赤沢氏。拙速は禁物だ。コンクラーベのような気構えで臨んでいただきたい。(熊)
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