大分建設新聞

四方山

経営者の覚悟

2025年06月04日
 高知市に本社を置く四国銀行に保管されている「血判状」に熱い視線が注がれているという。前身の「第三十七国立銀行」時代の1886(明治19)年に作成されたもので、こう書かれている。「当銀行ニ従事スル者本行之金円ヲ盗用シ又ハ故(ことさ)らニ人ヲシテ窃取セシメタルモノハ私財ヲ挙ケテコレヲ弁償シ而シテ自刃ス」▼つまりは、使い込みなどの不正が発覚したら、それを弁済の上、切腹するという覚悟の文章である。「盟約を結んでわれわれの決意を示し、命を懸けて守ることを誓う」という趣旨の言葉も添えられ、当時の役員、従業員計23人の署名の下に、それぞれの血判が押されている▼貸金庫から顧客の金などを盗んだり、金融機関を舞台にした不祥事が続く中、命を懸けて信用を守ろうとする「血判状」の存在は、SNSなどを通じて知られるようになったという。実は、血判状が作られた時代、第三十七国立銀行の経営は厳しかったという。心を一つに、という意味もあったのだろう。従業員にまで血判を迫った経営陣の覚悟がしのばれる▼あの元経営者が見たら、どんな感慨を覚えるのだろうか。日本を代表する日産自動車の前社長のことである。3月期連結純損益は6708億円の巨額赤字に陥り、ホンダとの経営統合協議の破談の責任を取る形で退任に追い込まれた。ところが前社長ら4人に支払われる退任金は6億4600万円に上るという▼2万人規模のリストラを打ち出す中で、役員は巨額の退職金を手に、何事もなかったかのように表舞台から去る。くだんの血判状にはこんな一文も添えられているという。曰く、「節操、義理、道徳を守り、恥を重んじる心は、昔の方が明らかに優れていた」。過ぎ去りし時代の方が良かったと思う心情なのだろう。令和の時代も変わらない。(熊)
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