大分建設新聞

四方山

国の未来は検討中

2025年06月19日
 課題は目白押しだったはずである。だが、選択的夫婦別姓も、政治改革も、「継続協議」の四文字で棚上げされ、皇位継承問題も、掲げていたはずの試案のとりまとめすら実現できないまま、今国会は22日で幕を閉じようとしている。いずれも長年にわたる政治課題のはずが、結局「何も決めない」ことが決まった▼そして代わりに石破茂首相の口から飛び出したのが、国民一人当たり2万円を給付するという物価高対策案である。今夏の参院選に向けて、自民、公明両党の選挙公約とする算段だという。選挙を目前に控えているだけに、「清き一票」の対価のようにも思えてくる。所得制限はなく、全国民一律に給付するというから何とも景気のいい話である▼だが、驚きという意味では、石破首相による「GDP1000兆円」「所得1・5倍」宣言の方が衝撃的だった。実現は2040年が目標というのだから気が遠くなる。池田勇人内閣も1960年、達成に10年を見込んだ「所得倍増計画」を掲げたが、右肩上がりの時代である。いま、国民が直面しているのは今日のレシートの合計額であって、15年後の「物語」ではない▼今回の公約で語られなかったことがある。財源問題だ。2万円の給付にしても、「税収の上振れで」と軽く流すが、それは本来、赤字国債の穴埋めや、教育・福祉の持続化に使うべきものではないのか。所得増といっても、社会保険料や物価上昇を考えれば、手元に残るのはむしろ減るかもしれない▼〈政治家の公約って、ホストクラブの約束より軽い〉。ネットでそんなつぶやきを目にした。言葉の響きだけが軽やかに踊り、現実は置いてけぼりだ。派手な数字をぶち上げれば国民はついてくる―そんな「見込み違い」の政治が続く限り、この国の未来は永遠に「検討中」である。(熊)
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