格差社会の影
2025年06月20日
揚げたての衣がカリッと音を立てる。「うまい!」。ジワッと広がる肉汁。このほど東京で開かれた「第16回からあげグランプリ」で、中津市内の専門店5店舗が各部門で金賞を獲得した。味も、香りも、ボリュームも、まさに「聖地」と呼ばれる中津の実力を見せつける結果となった。一つ一つに作り手の誇りが込められているのだろう▼受賞報告会のニュースが県内ニュースをにぎわせている最中、福岡市内の小学校の「からあげ給食」が全国ニュースになった。発端はSNSに投稿された1枚の給食写真。おかずの皿にうやうやしく鎮座しているのは、たった1個のからあげ。「少なすぎる」「寂しい」との声がネットを駆け抜けた▼市教委は「1個で2個分の大きさ」と説明したが、写真に写る皿の余白はかなり広い。朝日新聞13日付紙面によると、市議会でも取り上げられ、市長は「私もショックで、寂しい思いにもなった。(中略)考えることがたくさんある」と、改善する考えを表明したという。背景には昨今の食材費の高騰があるようだ。屈指の財力を誇る福岡市であっても、物価高に苦慮しているのだろう▼文部科学省の調査では、都道府県によって月額給食費(材料費)に最大1800円近い開きがあり、年間にすれば数万円の差になる。完全無償化を実施する自治体もある一方、まったく補助のない自治体もある。子どもがどの町に生まれたかで、給食の献立が変わり、親の負担も違ってくるということだ▼その差の要因は、地域の経済力か、自治体の予算編成か…。くだんのからあげ給食を巡っては「わが子の給食、刑務所より質素では?」との声も上がったという。全国平等かと思われていた給食にまで及ぶ「格差社会」の影。「おかわり自由」の未来は、いつになったら訪れるのだろう。(熊)