大分建設新聞

四方山

赤色の力

2025年06月24日
 先日、知人の男性が「今年、還暦を迎える」という。まだ、誕生日は来ていないようだが、どう見ても還暦とは思えない若さだ。最近、「還暦」という言葉自体、あまり耳にすることがなくなったと思うのは私だけだろうか。「還暦」という言葉よりも、今や「定年」に表現が変わっているように思う▼会社勤めの人は定年といえば退職を連想する。「定年」と聞いて、「赤いちゃんちゃんこ」を贈る人はいないだろう。やはり「還暦」と聞けば「赤いちゃんちゃんこ」を贈るのが通例かな。ここでは、詳しい説明は省略するが、還暦は古代中国の陰陽五行思想(十干十二支)に由来するらしい。干支が一巡して赤ちゃんに返る、つまり、人生が再スタートする節目とされている▼還暦祝いになぜ、赤い着物を贈るのか。「赤」は、そもそも昔から願いが込められた顔料で、神社の鳥居や拝殿などの塗装によく使われている。魔除けや邪気払いなど赤には力が宿ることから、還暦には「赤いちゃんちゃんこ」を身に着けて健康を願う意味から始まったとされる▼赤色顔料には、朱、ベンガラ、鉛丹などの種類があり、大昔から珍重されてきた。朱は、辰砂と呼ばれる硫化第二水銀で、中国や山口県萩市で今も採掘されている。大分市大字本神崎字浄願寺にある5世紀の築山古墳(前方後円墳)では、女性が埋葬された石棺内部に総量34㌔㌘の水銀朱が使用されていた。当時としては最高級の埋葬で、水軍を持つ海人部の中心人物と考えられている▼人間の血液は赤い。朱などの赤色は神聖なものとされ邪悪なものを寄せ付けない、呪術的な意味合いをもった特別な色と考えられていたことは確かである。2024年現在、男性平均寿命が81歳、女性が87歳の時代である▼50代は青、60代は黄、70代が赤と言ったところか。(勇)
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