参政党の躍進
2025年07月22日
参院選が終わった。予想されていたこととはいえ、今後の政治状況は一段と混迷の度合いを深めるのは間違いなさそうだ。自民党の退潮以上に驚かされたのは、最近までどこか〝キワモノ〟扱いされていた参政党の躍進である。2020年に結党されたばかりの政党が、いまや国政で確かな足場を築こうとしている▼街頭では「日本人ファースト」を掲げ、自民党のコアな支持層の一角を取り込み、SNSでは時に過激な言説を通して、現在の統治システムに漠然と不信感を抱く層への浸透を図った。そうした戦略的な選挙戦が同党の歴史的な勝利につながったのだろう▼だが同党の掲げる憲法案「新日本憲法」(構想案)にはいささか寒気を覚える。第1条で「日本は、天皇のしらす(統治する)君民一体の国家である」とうたい、現在の「主権在民」を否定し、「主権は国にある」と規定する。国の権限については手厚いのに対し、国民の権利は驚くほど少ない。現行憲法の「基本的人権の保障」「法の下の平等」などはすっかり抜け落ちている▼そして、「日本人ファースト」というスローガン。トランプ米大統領の「アメリカ・ファースト」の焼き映しに響く言葉だが、トランプ氏のそれとは決定的に違う。人種のるつぼと呼ばれる事情を反映して〝米国人〟という言い方はしない。「日本人」と規定した瞬間に、「日本人」と「それ以外」という区別が生まれ、排外主義につながりかねない▼日本には在日コリアンの問題がある。加えて介護施設、建設現場などで、日本社会を支える「外から来た人々」がいる。彼らを無視しての「日本人ファースト」は、国内に分断の種をまくだけだ。とまれ、参政党の躍進は国民の変化への期待の現れであることは確かである。なおさら冷静な振る舞いが求められよう。(熊)