大分建設新聞

四方山

見立て細工

2025年09月01日
 毎年8月の末に開催される別府市浜脇の「べっぷ浜脇薬師祭り」。隠れた目玉の一つが市の無形民俗文化財に指定されている「見立て細工」だ。竹や廃材など身近な素材で、名所や建物などを再現する造形文化の一つ。今年の祭りでは早速、別府湾に再就航したばかりのホーバークラフトが登場した。海に見立てたブルーシートの上には、かごなどでつくられた水陸両用船が浮かんでいた▼浜脇は竹細工で栄えたまちである。匠の技で、竹を編んで何でも形にしてしまう。湯けむりの地獄めぐりに、旅館や列車、飛行機…。大工やとび、庭師らの技術が競われるが、「見立て細工」が光るのは「楽しませよう」という発想の遊び心。細部にこだわりながらも、どの作品にも見る人の想像力にゆだねる「余白」がある▼発祥は江戸後期にさかのぼるという。培った伝統だろう。ユーモアのセンスだけでない。設計図はなくとも、荷重を読み、転倒しないように支えられている。せっかくこしらえても、祭りが終われば解体される。それも見越して組み上げられている。作品の一つ一つに、作り手の筋がしっかり通っている▼こちらには、貫く筋は見当たらない。参院選で与党が公約に掲げた「国民一律2万円の給付金」である。安易な現金給付はバラマキと評判は散々だったはずなのに、ここにきて物価高対策として「所得制限付きでの実施」案が再浮上しているという。さながら給付の〝見立て直し〟といったところか▼支給対象や規模をどう線引きするのか。財源の裏付けはあるのか。選挙前に急ごしらえした骨組みは、いったんばらして再構築というわけだ。ただし、政治の見立て細工は人の暮らしが乗る分だけ、現実の荷重がかかる。見せるだけでは済まない。組み直す以上は、芯の通った設計をと願うばかりだ。(熊)
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