サイバー時代
2025年11月06日
気が付けば駅から売店が消えていく。かつては「ある」ことが当たり前だったのに、そうではない時代になったようだ。ターミナル駅前の百貨店もまた、しかりである。山形、徳島、島根、岐阜の4県では、2020年代に入って姿を消した。百貨店の店舗数は1999年の311店をピークに、昨年末の集計では178店に減少した▼県内唯一の百貨店、トキハが創立90周年を迎えた。大分で生まれ、育った地場の百貨店である。大手が勢力を振るう業界の中で、地域に根を下ろした百貨店があること自体、誇っていい。大分市内の店舗では記念のセレモニーが開かれ、大勢の客でにぎわったという▼ところがお祝いムードの余韻が続く中、飛び込んできたのは耳を疑うニュースだった。グループ会社でスーパー事業を担うトキハインダストリーが、イオン九州の傘下に入るという。今年春にグループを襲ったサイバー攻撃が影響しているとも報じられた。「ランサムウエア」と呼ばれる身代金要求型ウイルスにサーバーが乗っ取られ、カード決済やポイントの利用ができなくなった一件である▼個人情報が外部から閲覧された可能性も指摘され、商売にとって何よりも大切な「信用」も傷つけられた。そして、大切なグループ会社の売却である。ご存じのように、トキハの買い物袋にはヒマワリの写真があしらわれている。一途に太陽を追うシンボルフラワーが自らの瑕疵ではなく、見えない「悪意」に泣かされている▼全国に目を広げればビール事業大手のアサヒグループホールディングスや、流通大手のアスクルもサイバー攻撃を受け、深刻な打撃を被っている。この種の攻撃は海外から組織的に行われていると見られている。サイバー時代ならではの「災害」だ。国として何らかの対策を講じる段階であろう。(熊)



