大分建設新聞

四方山

流行語

2025年12月10日
 もしや「日中冷戦」が入るのでは…と思っていた今年の「新語・流行語大賞」。年間大賞に選ばれたのは、10月の自民党総裁選で高市早苗首相が口にした「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」だった。5回も「働いて」と繰り返されると、聞いている方が先に息切れしそうだが、選考委員は「女性初の首相誕生のインパクト」と合わせて高く評価したらしい▼流行語を「一年に一度、定点観測して後世に伝える」ために始まった賞である。言葉とその担い手を記録する、いわば時代の「ことばのカルテ」だ。スタートしたのは、バブル景気の入り口に当たる1984年。当時は新語部門と流行語部門に分かれており、流行語部門の金賞に輝いたのは「まる金・まるビ」(表記は「金」と「ビ」を○で囲う)。それぞれ「金持ち」と「貧乏人」を表した▼職業ごとに金持ちと貧乏人を戯画化した当時のベストセラー本『金魂巻』から生まれた。1億総中流社会と言われた時代であればこそ笑って許された言葉だった。格差社会の今日では、とてもではないが共感など得られまい。流行語が時代を映す鏡たるゆえんだ▼「まる金・まるビ」から40年余。国のリーダーから「働く」という言葉が連呼されては、日本が怠け者の国になってしまったような感じもしなくもない。何しろ当の言葉の主が残業時間の上限規制など「労働時間規制の緩和」を指向し、働き方を巡る国のルールを動かそうとしているとなればなおさらである▼授賞式で高市首相は「国民に働きすぎを奨励する意図はない」としている。それでも、長時間労働がなお根を張る建設業界をはじめ、現場の実感からすれば「もっと働け」というメッセージに聞こえてしまう人も少なくないだろう。過労死が社会問題となる時代の再到来だけはご免だ。(熊)
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