最大の敵
2025年12月24日
「後発地震注意情報」という聞き慣れない言葉にドキリとした。青森県東方沖で8日深夜、マグニチュード(M)7・5の地震が発生、巨大地震のリスクが高まったとして、初めて発表された。もっとも、呼び掛けの期間は区切りのいい1週間だった。だが、現実の地殻の変動は、人間の暦に合わせてくれない。「後発注意」期間が終わってからも、中規模の余震が起きている▼そんな折、首都直下地震の被害想定が公表された。最悪で全壊・焼失40万棟。息をのむのは数の大きさだけではない。被害の多くが「火災」によるものだという。揺れの一次被害の後に、各所で発生する火災が二次災害となって地震で痛めつけられた街を襲う。M7級の地震で最悪の場合、死者は1万8000人に上るという▼軽い既視感を覚える。それもそのはず、今年3月に示された南海トラフ地震における本県想定の死者数と同じである。まがまがしい数字に、いずれ起きるとされる災害の規模に改めて慄(りつ)然(ぜん)となる。私たちは、佐賀関の大火を間近に目撃し、いくら最新の消防機材を持ち合わせても、激しい火炎の前には無力であることを知った▼もう一つある。大火の現場は、18年前から火災リスクが指摘されていたエリアだったことだ。木造家屋の密集地、狭隘道路…。分かっていたはずなのに、何ら対策を講じてこなかった。行政だけを責めるわけにいかない。危険は地図に描けても、対策に向けた予算と人手と合意形成は、地図の外にあるからだ▼「想定」は、それのみで完結するものではない。そこから何をすべきかを引き出し、対策に結びつけるのは、私たち一人一人である。東日本大震災で被災した語り部はこんな言葉を残している。「最も怖いのは津波ではなく、津波を忘れること」。そう、最大の敵は忘却である。(熊)




