いじめ
2026年01月16日
生徒への支援態勢の強化が奏功した―。県教委は昨秋、そう胸を張ったものだ。文部科学省の2024年度調査で、県内の中学生の不登校が9年ぶりに減少に転じ、小学校・中学校・高校でのいじめの認知件数も前年度から1065件減の7771件だった。支援ルームの拡充など、学校現場での対策が奏功したという分析だった▼だが、今思えば、そのデータは実態を正しく反映したものだったのだろうか。SNSで拡散され社会問題化している、大分市内の中学校で撮影された生徒間の暴力行為の映像を見た。明らかに校舎内と思われる場所で、男子生徒が別の生徒に拳を振るい何度も足蹴にする。胸が締め付けられる思いがした。単なる暴力ではない。リンチのそれだ▼市教委は9日の会見で、動画の事実関係は認めたものの、いじめに該当するかどうかは「調査中」として明言を避けた。動画は半年も前に撮影され、しかも撮影機材は学習用タブレットだったという。ここまで分かりながら、「いじめ」と明言できない理由は何なのか。危機感が欠如しているようにも感じられた▼ふと思う。もしSNSがなければ、今回の暴行問題は闇に葬られ、被害生徒は声を上げられぬままだったのではないか。皮肉にも、教室の教師には届かなかった子どもの無言のSOSを、ネットの海が受け止めたとも言えよう▼SNSでの拡散について、識者からは「加害少年の人権を侵害しかねない」と危ぐする声が上がる。だが、いじめは体だけでなく、心を殺す行為だ。守られるべきは被害者のそれであろう。数字上の「減少」に安堵する大人の隙を、動画はあざ笑うかのように、実際は深刻な事態であることを可視化して突きつけた。SNSは諸刃の剣だが、今回ばかりは大人たちの鈍感さを打ち砕く、重い警鐘となった。(熊)



