たいまつ
2026年01月21日
海を渡った「鬼」が、イタリア・ミラノで喝采を浴びたという。豊後高田市の天念寺に1300年前から伝わる修正鬼会。国の重要無形民俗文化財に指定されている伝統行事である。たいまつを掲げた恐ろしい形相の鬼は、実は仏の化身であり、人々の無病息災を願って暴れ回る―という内容である▼「鬼は仏」。この逆説こそが、神仏習合の聖地・六郷満山文化のミソである。言葉の通じぬミラノの観衆も、その荒々しい所作の奥にある「祈り」の精神に真剣に見入ったそうだ。ひるがえって、いま永田町で踊り狂っている「鬼」たちはどうか。仮面の下にあるのは、祈りとは程遠い欲望が見え隠れするようだ▼一月解散の風が吹き荒れる中、保身と党利党略という名の百鬼夜行が始まった。驚いたのは、立憲民主と公明の両党衆院議員が新党「中道改革連合」を発足させたことだ。長年にわたって激しく対立し、不倶戴天の敵同士だったはずが、高市早苗政権の電撃的な国会冒頭解散に対抗すべく「呉越同舟」に舵を切った。「理念なき野合」…。そんな言葉が頭をよぎる▼極め付きは、自民党と連立を組む維新である。大阪府知事と大阪市長の任にある同党の代表、副代表がそろって辞職して出直し選を仕掛けるという。党勢低迷に焦り、解散のドサクサに紛れてメディア露出を狙う「党勢拡大」のパフォーマンスと、揶揄する声も聞かれる▼豊後高田市の鬼は、たいまつの火で邪気を払い、人々に福をもたらす「仏の心」を持っていた。だが、永田町の鬼たちが振り回しているのは、己の権力を維持し、火事場泥棒さながらに票をかすめ取るためのたいまつに見えてならない。仮面の下にあるのは、民を思う慈悲か、それとも強欲か。一票という「たいまつ」でその素顔を照らし出し、国の明日を託せる「真の仏」を選びたい。(熊)



