パンダ
2026年02月02日
これほど愛された動物はいなかっただろう。東京・上野動物園で生まれ育った双子のジャイアントパンダ、シャオシャオとレイレイが中国に返還された。1972年の日中国交正常化から半世紀余り。国内からパンダが姿を消すのは、実に54年ぶりのこと。ニュース映像では別れを惜しむファンの涙が報じられたが、それこそが中国側の「思うつぼ」なのかもしれぬ▼発端は、昨年11月の高市早苗首相の「台湾有事」を巡る国会答弁だった。これに中国側が激しく反発。自国民の日本への渡航自粛や、日本からの水産物の輸入停止といった揺さぶりを強めている。そして、パンダ。日本側の貸与要望には「中国に見に来ることを歓迎する」(中国外務省)と、人を食ったような答えを繰り返すばかりである▼こう言ってはファンに申し訳ないが、パンダロスの影響は限定的である。だが、こちらの方は日本の経済に直結する話である。電気自動車やスマートフォンといったハイテク製品には欠かせない中国産の「レアアース(希土類)」。中国政府は1月上旬、対日輸出の規制強化の方針を打ち出した。詳細は明かされていないが、目的は一つ。日本の経済を土台から揺さぶる狙いなのだろう▼「必要な物は外から買えばいい」というグローバル経済の幻想は消えつつある。それどころか、大国の対外政策が露骨な「武器」に化していく時代になってしまったようだ。特定の国への依存を脱する供給網の「強靱化」は、国の存亡を懸けた最優先事項になったようだ▼パンダのいない檻を眺めて寂しがる余裕は、今の日本にはない。空いた「心の穴」以上に深刻なのは、産業の土台に開きつつある大きな亀裂だ。荒れ狂う国際情勢という「風」を読み、確かな礎をどこに築くべきか。その正念場が、すぐそこまで来ている。(熊)



