大分建設新聞

四方山

すってんてん

2026年02月09日
 雪の帝都を血で染めた「二・二六事件」から、今年で90年の節目を迎える。陸軍の青年将校らが武装蜂起した未曾有のテロは、政党政治を窒息させ、軍部独裁の引き金となった。「首謀者」として処刑された思想家・北一輝は、こんな辞世の句を詠んだ。「若殿に兜取られて負け戦」。自らが信じた天皇(若殿)から賊軍と見なされ、一か八かのクーデターに敗れた無念と悲痛がにじむ▼平和な令和の世にクーデターなどあろうはずもない。だが、政治家として一世一代の大勝負に打って出たのが高市早苗首相だった。1月19日の会見で「内閣総理大臣としての進退をかける」と言い切り、予算成立を待たずして断行した電撃的な解散。ふたを開けてみれば、自民党は歴史的とも言える大勝を収めた▼選挙戦の構図は、さながら「野党候補対高市早苗」の対決であった。政策論争は消え、首相への白紙委任を問う「人気投票」の様相を呈した。この異形の選挙がもたらした勝利の美酒は、政権にとって福音となるか、あるいは独善への毒薬となるか▼一方で、惨憺たる結果に終わったのが、立憲民主と公明の衆院議員らが急造した新党「中道改革連合」である。旧立憲の幹部クラスが軒並み議席を失った。長年対立してきた不倶戴天の敵同士による「呉越同舟」は、有権者の目には所詮理念なき「選挙互助会」の野合としか映らなかったのだろう▼二・二六事件の青年将校らの系譜に連なり、旧満州国で実業界を牛耳った元軍人・甘粕正彦は、敗戦に際して自ら命を絶った。その辞世は「大ばくち身ぐるみ脱いですってんてん」。兜どころか身ぐるみ剝がされた野党の心境は、まさにこの一句に尽きるのではないか。熱狂のあとに残されたのは、あまりに巨大な権力と、弱体化した監視役という、いびつな風景である。(熊)
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