WBC
2026年03月16日
世界一を決める、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。侍ジャパンの連覇が期待されたが、惜しくも準々決勝で敗退した。それでも大谷翔平選手の躍動に胸を熱くし、村上宗隆選手の一打に心を躍らされた。「日の丸」を背負った選手たちの重圧も相当だったはず。それを乗り越え、期待を力に変える精神力もまた、感動の一因に感じられた▼そんな祭典に妙な雑音が差し込んだ。天覧試合となった一戦で、天皇ご一家が退席される場面での村上選手の振る舞いを巡り、SNSなどで一部バッシングが起きた。腕組みやガムをかむ姿を切り取った映像に、「不敬」「人間性を疑う」などといった物騒な言葉が飛び交った。数秒の所作だけで人格まで断じるのは、いささか早計が過ぎよう▼むろん、天覧試合ともなれば独特の緊張感が漂うのは分かる。天皇ご一家を前に、居住まいを正すべきだという感覚も日本社会には根強い。だが、自らの信じる「こうあるべきだ」を唯一の正解として、少しでも型から外れれば激しく糾弾する。そんな「正義」の振りかざし方には、どこか窮屈さがつきまとう▼こうした窮屈さは、何もSNS空間だけの話ではあるまい。今回のWBCで最も気になったのが、これまで当然のように行われていた地上波中継が一切ないことである。放映権料が100億円超とも言われ、結局、日本国内では米動画配信大手のネットフリックスが独占配信することになった。もちろん有料である▼スポーツの熱狂は、多くの人に観戦の機会が開かれてこそ生まれる。ところが、WBCのようなスポーツの祭典までが、対価を払える人だけのものになってしまう。資本の原理とはいえ、これまで誰もが共有できたスポーツ観戦の感動にまで値札が付くと思うと、何ともさびしい話である。(熊)


