大分建設新聞

四方山

「だまし討ち」の呪縛

2026年03月23日
 WBCで米国を破り、世界の頂点に立ったベネズエラのロペス監督。当の米国の介入により、祖国は混乱のさなかにある。圧力があったのだろう。「政治的発言はしない」と口をつぐみ、ただ勝ち続けた。試合後、「58」と書いたキャップを掲げて言った。「ベネズエラの国番号だ。知り合いがいるなら今すぐ電話してくれ」。制約の中で意地を見せた男の姿は、まぶしかった▼対照的だったのが、訪米した高市早苗首相の振る舞いである。宣戦布告もなくイランを奇襲し、ホルムズ海峡を事実上の封鎖に追い込んだトランプ大統領を前に、「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだ」と持ち上げた。世界が目撃したのは、平和の使徒ではなく、力で相手をねじ伏せる暴君の姿だったというのに、である▼朝日新聞によると、仏ル・モンド紙は「お世辞の一種である『gomasuri(ごますり)』と報じたという。それだけでない。両首脳の会談中、記者からイラン攻撃を同盟国に事前に知らせなかった理由を問われたトランプ氏は、こう返した。「真珠湾攻撃の時、日本は知らせてくれなかっただろう」▼米国人記者の間に笑いが広がる中、高市氏は一言も発しなかった。「当時は同盟国ではなかった」とジョークで返すこともできたはずだ。唯一の同盟国と言いながら、米国は日本を対等な相手とは見ていないのではないか。そう感じさせる会談であった▼日米開戦前夜、両国関係は極度に緊張していたにもかかわらず、ワシントンの日本大使館は飲み会で出払っていた。結果、開戦通告は遅れた。それから85年。「だまし討ち」の呪縛はいまだ解けていないことを見せつけられたようだ。侮られても言い返せぬのでは、同盟ではなく従属である。外交の失敗は、時に砲弾より長く国を傷つける。(熊)
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