大分建設新聞

四方山

新年度

2026年04月01日
 新年度は、始まりの季節である。だが、始まりにはたいてい終わりが連れ立ってくる。何かが生まれる一方で、何かがひっそり姿を消していく季節でもある。3月末で、NTTの番号案内「104」が終了した。紙の電話帳「タウンページ」も幕を閉じた。番号案内の源流は、電話が開通した1890年にさかのぼる。タウンページもまた、「人名表」から数えて136年の歴史に幕を下ろした▼時代の流れなのだろう。スマホは今や暮らしの必需品となり、104の利用もピーク時の12億8000万回から、近年は1000万回ほどにまで減った。スマホで調べた方が早い、というわけだ。だが、そこには確かに、人の声で教えてもらえる安心があり、町の情報を一冊で確かめられる心強さがあった。便利さと引き換えに、暮らしのどこからか小さなぬくもりがこぼれ落ちていったようにも思う▼一方で、中津市では県内初のカスタマーハラスメント防止条例が施行された。市職員の約4割が執拗な要求の繰り返しや謝罪要求などを受けたことがあるという。相談窓口を設け、庁舎の電話には録音機能も備える。こちらは、失ってはならぬものを守るために生まれる新制度である▼理不尽な要求が目立つ世相の反映でもあろう。職員を守るために欠かせぬ措置なのであろう。だが、やはり考えさせられる。人の声で行き先を教えてくれたサービスが消え、代わって会話は記録される。地域のことを教えてくれた電話帳がなくなり、代わって注意書きや対応マニュアルが増えていく▼便利で安全な方向へ進んでいるはずなのに、この春の景色にはどこか余裕のなさがにじむ。新年度とは、本来は希望に胸を張る季節のはずである。人を導く「案内」より、人を身構えさせる「警戒」が目立つ春であってほしくはない。(熊)
名鑑CDバナー
取材依頼はこちら
事業承継プラザ 切り替え
arrow_drop_up
TOP