事業承継の芽
2026年04月06日
焼け跡のサクラが、一輪だけ花をつけたという。昨年11月の大規模火災で大きな被害を受けた大分市佐賀関。復興市営住宅に寄せ植えされた被災サクラが、この春の訪れを告げた。地元の人たちは「復興のシンボルになってほしい」と願っていると、毎日新聞は報じた。焦げた枝先に咲いた小さな花は、住民には大きな励ましに感じられるのであろう▼だが、春の便りは時に残酷でもある。佐賀関で関あじ、関さば漁を75年以上、漁具を通して支えてきた八潮工業が3月末で廃業した。昨秋の火災で工場が焼け、区切りをつけざるを得なかったという。それでも県漁協の倉庫で釣り針や重りづくりの再開を目指すという。会社は閉じても、技は絶やすまいとする。これもまた、復興のかたちだろう▼もっとも、幕引きは八潮工業一社だけの話ではない。帝国データバンクによると、県内で昨年休廃業・解散した企業は508件。前年を下回ったとはいえ、過去10年で2番目の多さである。必ずしも事業が行き詰まった末の幕引きではない。直近損益が黒字だった企業は51・5%、資産超過型も65%に上る。倒れてからではなく、倒れる前に静かに店じまいする―そんな「退場」が広がっているようだ▼業種別ではサービス業75件が最多で、建設業も65件と続く。昨今の物価高、人手不足ばかりが要因ではない。後継者難も深刻な影を落としている。経営には、踏ん張る気力だけでは越えられぬ坂が幾重にもある。花は「今年も咲いた」と喜べても、事業は「来年も続く」とは簡単に言えない▼焼けた枝に一輪の花が残ったのなら、地域の仕事もまた、一本ずつでもつないでいかねばなるまい。サクラは春が来れば咲く。だが、事業は放っておいて残るものではない。事業承継の芽もしっかり育てることが次の春につながる。(熊)

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