大分建設新聞

四方山

ごっつぁんです

2026年05月13日
 大相撲夏場所が幕を開けた。東京・国技館周辺では力士たちの「ごっつぁんです」という言葉が飛び交っているのだろう。角界独特の言葉だが、語源は「ご馳走さまです」がなまったものと言われる。食事への感謝だけでなく、世話になった相手への礼にも使われる。タニマチから小遣いをもらえば、それこそ1オクターブ上がった声で「ごっつぁんです」となるのだろう▼だが、土俵上で懸賞金を受け取るとなれば、そうはいかない。神妙な表情で左、右、中と手刀を切る。古事記に登場する「造化の三神」と呼ばれる神産巣日神などの神々への感謝が込められているという。相撲が神事であるゆえんである。郷土の英雄、双葉山はそうした所作が美しかったという。「未だ木鶏たりえず」の言葉で知られる昭和の大横綱。慢心に動じぬ品格の人だった▼お隣、熊本県八代市が揺れている。新庁舎建設を巡り、元力士の市議が賄賂を受け取った疑いで逮捕された。その額たるや6000万円である。ちゃんこ鍋の具にしても大きすぎる。それこそ「ごっつぁん利権」である。容疑段階で断定は慎むべきだが、世間の視線が厳しくなるのは当然である▼問題は、受け取ったとされる側だけではない。報道によれば、業者側に有利な評価基準案が市側に持ち込まれ、入札に影響した疑いも浮かぶ。役所に、外からの働き掛けをはね返す規律があったのか。おかしな提案を「おかしい」と言える空気があったのか▼行政の土俵で軍配を握るのは、制度であり、手続きであり、職員一人一人の倫理であろう。そこが緩めば、声の大きい者の押し出しがまかり通る。公共工事は税金を街の未来に変える営みである。「ごっつぁんです」で決着する話ではない。耳を傾けるべき相手は、議員などではない。納税者である市民だ。(熊)
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