大分建設新聞

四方山

AI

2026年06月03日
 「AIに相談してから人に聞く」。第一生命の今年のサラ川で、優秀百句に選ばれた一句だ。まず人工知能(AI)に尋ね、それから人に確かめる。かつては人に相談し、足りなければ調べたものを、いつの間にか順番が逆さまになった。AIを詠んだ句が目立った今年の世相を言い当てていると感じた▼だが世の中は、その川柳より先を行っているらしい。人に聞く前に、まずAIが相談相手になる。それを突きつけたのが、巨人の阿部慎之助前監督の一件だ。暴力を受けた18歳の長女が、対話型AI「チャットGPT」に「どうしたらいいか」と相談し、その答えに沿って児童相談所に通報。結果、父は逮捕され、監督の座を退いた▼こども家庭庁の調査でも、10代の生成AI利用は急速に広がっているという。調べ物、宿題だけではない。進路、人間関係、家族の悩みまで、スマホの向こうに「それらしい答え」を求める。かつてなら友人や先輩、家族に打ち明けていた悩みもまずはAIというのが当節の若者らしい▼折しも、セブン―イレブンを育て、日本にコンビニ文化を根付かせた鈴木敏文さんが亡くなった。享年93。座右の銘は「変化対応」だった。24時間営業、弁当の販売、銀行業への参入……。人の流れ、暮らしの変化、消費者の気分を読み、過去の成功体験を疑い続けた経営者だった。便利な答えをなぞるのではなく、誰も見ていない変化を見つめ、自分の頭で仮説を立てた▼私たちの日常に深く浸透してきたAIを、いまさら遠ざけることは非現実的であろう。とはいえ、AIは答えを示してくれても、何を問うべきかまでは教えてくれない。差し出された「糸口」の先に、自分だけの問いを見つけられるかどうか。問いを持つ者だけが、便利さの先にある新しい景色を見つけられるのだろう。(熊)
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