紫陽花
2026年06月08日
梅雨入りの便りとともに、県内各地のアジサイが見ごろを迎えている。宇佐市の響山公園や臼杵市の妙顕寺では、白や紫の花々が雨の季節を彩る。妙顕寺では5月のうちから咲き始めたという。アジサイといえば、仲夏の季語である。旧暦5月に当たり、今の6月中旬から7月中旬にかけてである▼「紫陽花(アジサイ)や昨日の誠今日の嘘」。正岡子規の代表句の一つ。雨に濡れ日ごとに色を変える花に、人の心の移ろいを巧みに重ねている。季節の機微を実に細やかにすくい取った作である。だが、地球温暖化の今日、アジサイの盛りは早まっている。地域によっては、6月半ばともなれば、強い日差しで花が焼けて変色してしまうとも聞く。令和の気候では、子規の名句の湿り気も乾いてしまうかもしれぬ▼季節の歩みそのものが、早まっている。今年の5月は全国的に記録的な高温で、雨も少なかった。かと思えば6月に入るなり、台風6号が西日本から東日本の太平洋側に記録的な大雨をもたらした。梅雨のしとしと雨どころではない。暦のページを一枚、いや二枚ほど先にめくられたようである▼暑さの訪れも早い。県内で5月に熱中症の疑いを含め救急搬送された人は75人。過去10年で最多となった。日田市では5月18日に最高気温35・3℃を記録し、早くも猛暑日となった。もはや「夏の前触れ」どころか、夏そのものが前倒しでやって来ている▼気になるのは、この先である。西日本の3カ月予報では、6~8月の平均気温は平年より高い確率が70%という。建設現場では、工程管理と同じくらい体調管理が重い意味を持つ日々を迎える。アジサイは雨に打たれて色を深める。だが人間は、雨にも暑さにも打たれっ放しではいられない。季語が揺らぐ時代である。だからこそ、安全感覚だけは揺らがせてはならない。(熊)



