大分建設新聞

四方山

右に左折

2026年06月17日
 ガッツ石松さんが他界した。元世界王者でありながら、リングを降りてからも茶の間で愛された希有な人だった。「OK牧場!」の明るい響きも、握り拳を突き上げるガッツポーズも、どこか人を元気にする力があった。時に破天荒といわれたが、その言動には、多少の脱線さえ親しみに変えてしまう人間味があった▼数々の「迷言」も、実に味わい深い。「人生観が380度変わった」「危険が危ない」…。天然と笑われたが、「ばかと思っている人には、そう思わせておけばいい」と本人は涼しい顔。こんな逸話も残る。タクシーに乗ったガッツさんは、運転手にこう告げたという」。「そこ、右に左折して」。ドライバーもさぞかし困惑したことだろう▼ところが永田町では、笑って済ませられない「右に左折」が続いている。発端は、週刊文春が報じた高市早苗首相の中傷動画問題である。昨年の自民党総裁選や今年の衆院選で、高市氏の陣営が対立候補を中傷する動画を大量に作り、SNSで拡散していたとされる一件だ▼高市氏が強く否定する中、続報が放たれた。動画制作を依頼する秘書のものとされる音声が、文春の有料サイトにアップされたのだ。公開当初、首相は音声の確認さえも拒んだ。ところが翌日には一転、「確認したが、本人か判断は難しい」。強弁すれば逃げ切れる…。そんな構えの前で、「説明責任」の四文字はかすんで見える▼ガッツさんならしくじっても「OK牧場!」の一言で済むが、権力者の迷答弁は、民主主義の足元をぐらつかせる。存在感の乏しかった野党も久しぶりに活気づく。とはいえ、物価高は暮らしを圧迫し、国際情勢も不安定さを増す。国会が本当に向き合うべき課題は山ほどある。右に左折するような答弁に付き合わされ、キレたいのは国民であろう。(熊)
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