湯けむり
2026年06月23日
数々のアイデア商法で「別府観光の父」と呼ばれる油屋熊八ゆかりの亀の井バスが、屋根のない最新の二階建ての観光バスを走らせるという。亀の井バスといえば「別府地獄めぐり」。「次はその名も珍しき 山の中なる海地獄」。1928(昭和3)年の運行開始から続く、バスガイドの七五調の名調子は、今も変わらぬ別府観光の風物詩だ。地獄と聞けば恐ろしいが、別府の地獄は人を笑顔にする▼その「地獄」が、日本国中でちょっとした話題だ。火付け役は、動画配信サービス会社Netflixの連続ドラマ『地獄に堕ちるわよ』のヒットだ。モデルは、2000年代にテレビ界を席巻した占い師の細木数子さん。「あんた、地獄に堕ちるわよ」。上から目線で、断定口調のどこかおどろおどろしい響きを覚えている向きも多かろう▼ところが、それと瓜二つの物言いが、いま永田町を揺さぶっている。立憲民主党の古賀千景参院議員が、参院決算委員会で放った一言である。「自衛隊に行く子どもたちは経済的に厳しい。豊かな子どもたちは自衛隊とかなりませんよ」。即座に撤回したが、時すでに遅し。とんだ炎上騒ぎになっている▼小泉進次郎防衛相は「自衛官への冒涜」と気色ばみ、国民民主の榛葉賀津也幹事長は「あまりにもひどい職業差別」と憤った。なるほど古賀氏の発言は、差別と難じられても仕方のない暴言であろう。元教師という経歴を思えば、なおさら重い▼それにしても古賀氏は、かつて立憲を率いた野田佳彦元首相の父が自衛官だったことは知っていたのだろうか。その野田氏は、公明と新党「中道改革連合」を起こし、衆院選で大敗した。議員の離党は止まらない。そして今度は立憲議員の失言。野党勢力の立て直しは湯けむりに覆われたまま。行く先は果たして地獄の釜か。(熊)



