家族とは
2026年08月19日
NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』が、佳境へ向かっている。天下人・秀吉を弟の秀長が支える物語。根底に流れるのは「兄弟の絆」だ。だが、同じ戦国時代を見渡せば、親子や兄弟が刃を向け合った例には事欠かない。家族は最も頼れる味方である一方、時には最も近い敵にもなった▼郷土の英雄、大友宗麟も例外ではない。1550年、父の義鑑が嫡男の義鎮(後の宗麟)を廃し、側室との間に生まれた塩市丸に家督を継がせようとしたことで家中の対立は爆発。大友館が襲われ、塩市丸と母は命を落とし、義鑑も重傷を負って死んだ。二階崩れの変である。宗麟の関与は定かでないが、後に九州に一大勢力を築く若者は、父と異母弟を失う血なまぐさい家族の亀裂の中から当主となった▼時代が下っても、家族の難しさは変わらないらしい。『文藝春秋』9月号で、昭和を代表する女優、小川真由美さんの娘、雅代さんが母との長い確執を明かしている。幼い頃から母の強い支配に苦しみ、やがて距離を置いた。約10年間、顔を合わせることもなかったという▼鹿児島で母が亡くなったと知らされたのは、死から2カ月後。母が鹿児島で暮らしていたことさえ、その時初めて知ったという。それでも胸に残るくだりがある。母の部屋には、雅代さんが小学校の頃に贈った手製の陶器人形が、大事そうに飾られていた。長い断絶の歳月を越えて、母はそれを手放していなかった▼「人生の悲劇の第一幕は親子となったことにはじまっている」。芥川龍之介の言葉である。近いから愛し、近いからこそ傷つけてしまう。家族の愛憎とは、近すぎるがゆえに生まれるものなのか。それでも、離れた歳月の底に一つの人形が残ることもある。家族とは、愛だけでも憎しみだけでも語り切れない、何とも厄介な縁である。(熊)


