大分建設新聞

四方山

脚色

 
2026年09月28日
 郷土自慢の猛将が、死後400年以上たって悪者扱いされては、たまらないのだろう。NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」で、岡藩初代藩主・中川秀成の父、中川清秀が秀吉を裏切ったように描かれたことに、竹田市は黙っていなかった。「遺憾」をNHKに伝えるだけでなく、市歴史文化館・由学館で清秀の史実を伝える緊急企画展まで開いた▼「しょせんドラマだから」では済まないということだろう。フィクションと史実を巡り、NHKは別の火種も抱える。日米開戦前の内閣直属の総力戦研究所を題材にした特集番組内の再現ドラマについて、当時の所長の孫が祖父の人物像をゆがめたとして、NHKなどを名誉毀損で提訴した。歴史物は、脚本家の想像力と史実の間で、ますます細い綱を渡ることになりそう▼米国では、もっと大胆な「書き換え」が行われた。トランプ大統領は、カナダとの国境にまたがるオンタリオ湖を「アメリカ湖」に改称する大統領令に署名した。カナダは反発しているが、米国内のグーグルマップでは「アメリカ湖」と表示された▼そして今度は歴史である。先ごろの米中首脳会談で、トランプ氏は習近平国家主席を前に、両国が第2次大戦で「同盟国」となったと述べた。だが当時、米国が手を結んだのは蒋介石率いる中華民国だった。現在の中華人民共和国の成立は、戦後の1949年である。「日本の軍国主義」に立ち向かったと語る習氏の歴史叙述に、大統領が呼応した格好だ▼日本にとって米国は「唯一の同盟国」のはず。冷え込む日中関係の中、米国が中国に秋波を送るかのような発言は、中国が日本に浴びせる「新型軍国主義」批判に利用されかねない。竹田市は大河の脚色に「待った」をかけた。では、大国による歴史の「脚色」には、誰が待ったをかけるのか。(熊)
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