カフカと建設業
2026年09月29日
将来に向かって歩くことは僕にはできません。将来に向かってつまずくことは僕にはできます。一番うまくできることは、倒れたままでいることです―。これはNHKラジオ深夜便の人気コーナー「絶望名言」で紹介された小説家フランツ・カフカの言葉。つい「立たんのかい!」とツッコミを入れたくなる▼このコーナーは、偉人や文豪が残した絶望的な言葉を紹介し、苦しんでいる人に共感とともに救いを見いだしてもらうのがコンセプト。放送では他に「幸福になるための完璧な方法が一つだけある。それは、自己の中にある確固たるものを信じ、しかもそれを磨くための努力をしないことである」。「しないんかい!」とツッコミたくなる▼カフカがどんな人なのか調べてみたところ、建設業との深い関係を発見した。昼間は労働者傷害保険協会で働きながら、夜は小説を執筆したという。主な仕事は、事故が多発していた建設業や採石業などでの労働災害の防止と保険適用の分類。本人が建設現場をレポートした文書の中では、安全ロープなしの高所作業やずさんな管理体制を厳しく告発し安全意識を啓発していたらしい。死亡事故防止のために作業員がかぶる安全ヘルメットを発明したという説もある。建設現場での経験は小説にも反映されており、測量士が主人公の『城』などがある▼ある日突然、虫の姿になった主人公が登場する『変身』は、現代の「引きこもり」を予見した小説とする説もある。役に立たなくなった人間に対してどう向き合い、見放された人間はどう生きるのかを描いて読み継がれる。絶望のうちに何を感じ、どう動くかについて考えさせられる▼ここまで書いて恥ずかしながら、じつは私は未読である。読書の秋、これをきっかけにカフカを読んでみようかと考えている。(コデ)


